皮革に漆を塗布しては乾かし、また塗布する。その繰り返しで何層もの色彩を重ね、まるで地層のような色の重なりから削り出して表面に現れる景色を生み出していく、本池大介の漆皮作品。 バッグから平面絵画、オブジェへと造形を広げる中、今回はエッジの際立つ立方体が生まれました。多方面の注目を集め、勢いを増す本池の漆皮。現在の地点を展示いたします。 本池大介は、ソリスト。 たった一人で全ての工程を進めるアーティストです。皮革に漆を何層にも塗布して、乾かしてはトーン(色彩)を重ねていき、最後に削り出していく過程で、その一点にしかない唯一無二の表情を生み出していきます。 galerie aで発表するたび、漆皮の表現は変化しています。重ねていく色彩、表面の艶出しや、立体をくるんだあとのような凹凸。どれも細部まで丁寧に処理が施され、どこまでもエレガントな表情をたたえています。 黒だけでなく、ベンガラの赤や白漆、ブルーなどを含めた色調の重なりは、本池自身の生まれ育った鳥取近隣の宍道湖や様々な自然の風景を映し出すようです。
Tomohiko Kato
革の面に漆を一層塗る。 漆が硬化したら、面に削りをあて柄を生み出し、丁寧に磨き上げる。 それをひたすら繰り返す。
色を変え、砥石を変え、何層も何層も塗りと削りを繰り返していく。
幾重にも積み重なる彩を帯びた漆の塗膜の下には、 いつかの時代に生きた生命の表皮が眠る。
動物たちの命を経てもたらされた素材に、 古の叡智である漆芸の技法と本池氏独自の手技が組み合わされ、 再び輝きを与える。
本池氏独自の技法や素材へのアプローチ、 そこに審美眼を併せ持つ秋吉氏が加わって高められ生み出される作品は、 唯一無二の漆皮の新境地であり、ただただ僕を惹きつけてやまない。
クリエイティブディレクター/デザイナー 加藤 智啓
本池に見せられた、革に漆を塗り重ねた原版。これまでに見たことのない表情に驚きを隠せませんでした。この表現が年々、進化し続けています。
No.(Tones)
本池が考える「現代の漆皮箱」。 漆皮表現の初期から作り続けている象徴的な作品です。 鞄ではなく、オブジェを作るという意識で取り組まれました。
Objects
抽象的なフォルムを追い求めたオブジェ群。 具象表現を続ける父と相反するかのような抽象的な表現は、 自身の表現とは何か?自問しながら生み出される。
Art works
皮が持つ特徴とは正反対な硬さ・直線を表現したキューブ型の作品や平面作品。 点と線と面が作り出す、皮が持つ可能性を追求した。